採用戦略の立て方|事業課題から人物像・予算・選考・改善を決める
この記事の内容
採用を始めるとき、最初に求人媒体を選んでいないでしょうか。募集を出す前に、何のために人を採り、どんな仕事を任せ、どの条件なら働いてもらえるかを決めておくと、人物像や発信内容を同じ目的から考えられます。
この記事では、必要な仕事から採用活動を組み立てる手順を紹介します。記入表と架空の企業例を使い、募集の準備から活動後の見直しまでつなげて考えます。
採用戦略と採用計画の役割
採用戦略は、事業に必要な人材をどう迎えるか、その方向と選択を決めるものです。採用計画は、その方針を人数、時期、費用、担当、具体的な行動に落としたものと整理できます。採用広報は、候補者に会社や仕事を知ってもらう取り組みとして、全体の中に位置付けます。
例えば「顧客への回答を早くするため、見積もり作成と納期調整を担う人を迎える」が方向なら、「必要な人数、入社してほしい時期、募集と選考の担当、使える費用」を決めるのが計画です。採用サイトの文章を直すことだけで、この全体が決まるわけではありません。
用語と採用活動全体の参考:doda法人向け「採用戦略とは?」
https://www.saiyo-doda.jp/guide/kihon/recruitment-strategy
1.人を採ることで解決したい事業課題を決める
「忙しい」「人が足りない」と感じるとき、現場ではどの仕事が止まっているのでしょうか。どの業務で、誰が、何に時間を使っているか。顧客やほかの部署にはどんな影響があるか。担当者の話と業務の記録を照らし合わせると、採用した人に任せたい仕事が見えてきます。
業務の分担や手順の変更で対応できる部分はないか、併せて考えたいところです。判断をする人が不在なのに、作業担当だけを増やしても止まる原因が残るかもしれません。採用が必要な仕事と、採用前に整える仕事を分けると、人を迎えるために準備すべきことも明らかになります。
2.仕事内容から人数と人物像を考える
担当してほしい業務を書き出すと、現在の体制でどこまで対応でき、どれだけの仕事を新しい人に任せたいかを考えやすくなります。欠員の補充か、新しい役割か、入社後の教育を誰が担えるかによって、人数や募集の優先順位は変わります。
人物像を「明るい」「コミュニケーション力が高い」と表すだけでは、必要な力が伝わりにくいことがあります。例えば、納期調整で必要なのは、依頼内容を確認し、不明点を担当者に聞き、変更を相手に説明する力です。入社時に必要なことと、社内で教えられることを分けると、経験条件を必要以上に増やすことを避けられます。
人物像が見えてきたら、選考でどう確かめるかまで考えておくと、面接の準備につながります。過去に担当した業務を聞くのか、実際に近い課題について説明してもらうのか。採用後に任せる仕事をもとに判断項目を共有しておけば、面接担当も同じ観点から話を聞けます。
3.働く価値を、実際の条件と一緒に整理する
候補者が知りたいのは、会社が伝えたい魅力だけではありません。どんな仕事をし、誰と進め、どんな支援を受け、どんな条件で働くのかです。社員の経験と実際の制度や運用を照らし合わせると、入社後の仕事を具体的に伝える材料が集まります。
例えば「裁量が大きい」なら、本人が決められることと、相談が必要なことは何でしょうか。「成長できる」なら、担当する仕事と、学ぶための支援まで示すと、その意味が伝わります。まだ実現していない制度は、現在利用できる制度と分けて説明する必要があります。
給与、勤務時間、勤務地などの条件は、担当者が正式な内容を確認します。魅力的な表現を考える前に、仕事内容と条件が候補者に正しく伝わる素材を揃えることが必要です。
4.採用手法、費用、日程、選考を組み合わせる
人物像に合う候補者は、どこで仕事を探し、何を比較しているでしょうか。その仮説をもとに、求人媒体、人材紹介、直接の働きかけ、社員からの紹介などの手法を検討します。候補者に届く可能性に加え、費用の仕組みや社内の対応負荷も比較の観点になります。一つの手法がどの会社にも最適とは限りません。
採用活動には、媒体や紹介料のほかに、原稿・写真などの準備や、面接・連絡に使う社内時間も必要です。金銭の支出と社内工数を別々に記録すると、手法ごとの負担を比較しやすくなります。料金や契約条件を判断する際は、実際の見積もりの確認が欠かせません。
日程を組むときは、入社してほしい時期から、募集準備、応募受付、選考、意思確認、入社準備に必要な時間を考えます。応募者の事情で前後する時間と、自社が対応できる時間を分け、担当と代替担当も決めておくと、対応の見通しが立ちます。募集開始日だけが決まっていて、面接枠がない状態を避けるためです。
- 1.必要な仕事を決める事業課題・任せる業務・必要な人数
- 2.迎える人と条件を考える人物像・働く価値・雇用条件
- 3.採用活動を組み立てる手法・費用・日程・選考の担当
- 4.止まる段階を見直す応募・選考・入社後の記録から改善
一枚で整理する採用戦略表
| 項目 | 記入すること | 確認する相手・材料 |
|---|---|---|
| 採用の目的 | 解決する事業課題と、変えたい仕事の状態 | 経営者・現場責任者 |
| 必要な仕事 | 任せる業務、業務量、権限、他部署との関係 | 業務記録・現場担当者 |
| 人数と時期 | 必要な人数、優先順位、入社の希望時期 | 人員計画・教育体制 |
| 人物像 | 必須の能力、教えられること、選考で確かめること | 現場・面接担当者 |
| 働く価値と条件 | 仕事内容、支援、意思決定の範囲、正式な雇用条件 | 社員・条件の管理担当者 |
| 募集手法 | 候補者に届く経路、費用、社内負荷 | 過去の募集結果・見積もり |
| 日程と担当 | 準備、募集、連絡、選考、入社支援の担当と予定 | 担当者の対応可能時間 |
| 改善の判断 | 記録する指標、確認する日、見直しを決める人 | 応募・選考の記録 |
5.人数だけでなく、止まっている段階を見る
応募数が少ないときは、募集を見てもらえていないのか、見た人が応募していないのかを分けます。応募はあるのに選考が進まないなら、要件や選考、連絡の遅れを見ます。辞退理由も、候補者が話した内容と社内の推測を分けて残します。
| 段階 | 記録するもの | 見直す問い |
|---|---|---|
| 募集への接触 | 媒体で取得できる表示・閲覧数と、その定義 | 想定する候補者へ届いているか |
| 応募 | 重複を除いた応募者数と応募経路 | 仕事と条件が判断できる内容か |
| 選考 | 段階別の人数、通過・辞退・連絡の記録 | 要件、評価、対応速度に問題があるか |
| 内定から入社 | 内定、承諾、入社の人数と時期 | 期待する仕事と条件の理解に隔たりがあるか |
| 入社後 | 任せた仕事、困りごと、必要な支援 | 想定した役割と受入れ体制が合っているか |
選考の比率を見るには、同じ募集に応募した人たちを、その後の段階まで追う必要があります。例えば、今月の内定数を今月の応募数で割っても、内定者が先月の応募者なら選考の通過率にはなりません。選考中の人が残っている場合も、最終結果とは区別します。数字が少ないうちは、一人の変化で比率が大きく動くため、人数と個別の事情を併せて見ることが大切です。
架空の例:顧客への回答が遅れる会社
以下は手順を説明するために作成した架空の例で、Lazottoの支援実績ではありません。
営業担当が訪問と見積もり作成を兼ね、外出中に顧客への回答が止まる会社を考えます。最初は営業職の追加募集を考えましたが、業務を整理すると、受注内容の確認、見積書の作成、納期の連絡を分担したいことが分かりました。
そこで、まずこれらの業務を任せる役割を検討します。価格を決める権限は営業責任者に残すため、担当者が確認すべき範囲と、責任者が回答する仕組みも整えます。採用するだけで判断の待ち時間がなくなるわけではありません。
求人で伝えるのは「会社を支える仕事」という抽象的な説明に加え、誰から依頼を受け、何を作り、どこまで判断するかです。選考では、情報が足りない依頼を受けた経験や、不明点をどう確認したかを聞く方法が考えられます。入社後に教える商品知識と、入社時に必要な確認・説明の力を分けます。
募集後、閲覧が少なければ接触する経路を、閲覧があるのに応募が少なければ内容や条件を確認します。入社後も回答が遅いなら、採用人数だけを問題にせず、判断権限と情報共有に戻ります。事業課題、仕事、人物像、発信、受入れを一つにつなげる考え方です。
自社で決めることと、相談できること
何のために採用するか、どの仕事を任せるか、どの条件で迎えるかは、自社の判断が必要です。その内容が決まっていないと、外部へ求人原稿を依頼しても、原稿の前提が揃いません。
Lazottoでは、経営上の採用課題や、会社の考え・働く価値をどう言葉にするかについて相談を承っています。求人票や採用向けの原稿制作は、内容と範囲を確認して個別にご相談いただけます。募集手法の運用、候補者への連絡、選考などは、それぞれの実行担当を決めて進めます。
採用の方向や、伝える内容を整理したい方は、現在の募集内容と、困っている仕事をお聞かせください。
https://lazotto.jp/contact/