企業理念・MVVの作り方想いを掘り下げ、言葉を選ぶまで
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企業理念を作ろうとすると、まず「使命は何か」「どんな会社を目指すか」を埋めたくなります。ところが、話し合って出てきたのは「お客様第一」「信頼」「挑戦」。間違ってはいないのに、自分たちの会社を言い表せている気がしない。そんなところで、手が止まることがあります。
理念を作るには、想いの根を掘り下げ、実現したい未来との関係を考え、その意味が人に届く言葉を選ぶ必要があります。この記事では、設備修理の会社を例に、抽象的な想いから文案を考えるまでの過程をたどります。
ミッション・ビジョン・バリューとは?三つの意味と違い
MVVは、Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Values(バリュー)の頭文字をまとめた呼び方です。会社が存在する意味、向かう方向、大切にする考え方を言葉にして共有するために用いられます。
一般的な解説では、次のように整理されています。ただし、各社が使う名称と意味は一様ではありません。
| 要素 | 一般的に説明される意味 | 考える問い |
|---|---|---|
| ミッション | 会社の使命や存在意義 | 事業を通じて、誰にどのような価値を届けるのか |
| ビジョン | 目指す未来やありたい姿 | その価値を届けた先で、どんな状態を実現したいのか |
| バリュー | 共有する価値観や行動の原則 | 判断に迷うとき、何を大切にするのか |
例えば、同じ修理の仕事でも、「早く元に戻すこと」を中心にする会社と、「顧客が修理と交換を納得して選べること」を中心にする会社では、説明や提案の仕方が変わります。三つの名称を覚えるだけでなく、何を目指し、そのために何をし、どんな姿勢で取り組むのかがつながっているかを考えます。
一般的な用語整理の参考:グロービス経営大学院「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?」
https://mba.globis.ac.jp/knowledge/detail-25243.html
最初に考えたいのは、いま理念を作る理由
新しい事業を始める。会社が大きくなり、代表が一人ひとりに想いを伝えることが難しくなった。事業は変わったのに、会社を説明する言葉が昔のままになっている。理念を必要とする背景によって、考えるべきことも変わります。
例えば、代表の中では会社の目指す未来が見えているのに、文章にすると一般的な言葉になる場合。言い回しを選ぶ前に、その未来をなぜ実現したいのか、自分たちの事業とどう結び付くのかを掘り下げる必要があります。
まずは、「いまの言葉では何が伝わらないのか」「これから何を実現したいのか」を考えてみてください。最初から答えがまとまっていなくても構いません。説明しようとして詰まるところや、書いてみて違和感が残るところが、問いを深める出発点になります。
Lazottoが考える、ミッション・ビジョン・バリューの関係
MVVはミッション・ビジョン・バリューの略称です。言葉の捉え方は一様ではありません。Lazottoでは、次の関係で考えています。
| 言葉 | Lazottoの捉え方 |
|---|---|
| Mission | 目指す未来と、会社の存在意義を一つにしたもの。 |
| Vision | Missionを達成するために、何を為すのか。 |
| Value | 大切にする価値観。 |
Missionを考えるときも、存在する理由だけで終えず、実現したい未来まで掘り下げます。そこに向けて何を為すかをVisionとして考える。この関係を踏まえ、まずは言葉にする前の想いから見ていきましょう。
「大切にしていること」の意味と、その根を掘る
「お客様を大切にしています」という答えを聞いたら、まず、その会社にとって「大切にする」とはどういうことかを尋ねます。要望をかなえることなのか、相手が納得して決められることなのか。言葉の意味を考えながら、その想いが生まれた場面へ問いを深めます。どんな相手に、何をしたのか。別の選択肢もあった中で、なぜそれを選んだのか。負担が増えても続けたことには、どんな理由があったのか。
ここで知りたいのは、立派なエピソードの数ではありません。本人にとって当たり前になり、普段は説明しない判断です。
同じ「丁寧」でも、大切にしているものは違う
例えば、設備修理の会社が「丁寧な説明」を大切にしているとします。この会社にとっての丁寧さを尋ねると、「交換を勧めるだけでなく、修理して使い続ける場合の負担も伝えること」という答えが返ってきたとします。
「なぜ、交換を勧めるだけではいけなかったのでしょうか」。この問いに、「仕組みを知らないからという理由で、お客様の選択肢を狭めたくなかった」と答えたとします。
この場合、丁寧さの奥にあるのは、話し方へのこだわりだけでしょうか。知識の差があっても相手が自分で選べることを大切にしている、とも読めます。ただし、これはまだ解釈です。「いつもそう考えているのか」「別の場面でも同じ選択をするか」を、さらに本人と確かめる必要があります。
自社にとって何を意味するか。
なぜ、それを大切にするのか。
誰の、どんな状態を変えたいか。
事業を通じて何ができるか。
二つの関係を読み解き、掲げる言葉を選ぶ
「つまり、こういうことですね」と早くまとめすぎると、聞き手の理解に収まったところで話が止まります。本人がすぐに答えられない問いも、急いで埋めずに考える時間を取る。その先で、最初の答えとは異なる言葉が見つかることがあります。
実現したい未来から、事業の意味を考える
過去の経験を深く聞いても、「これから、何を実現したいのか」は別に問う必要があります。創業のきっかけと、いま事業を続ける理由が同じとは限りません。始めた頃には見えていなかった課題や、仕事を重ねて生まれた願いもあるはずです。
先ほどの修理会社なら、「お客様が納得して選べるようにしたい」の先へ進みます。選べるようになったら、その人の暮らしはどう変わるのか。今はどんな不安や諦めがあるのか。それを変えるために、自分たちの仕事には何ができるのか。
例えば、「設備のことが分からないために、住み慣れた家での暮らしを諦めてほしくない」という想いが出てきたとします。すると、丁寧な説明は仕事の一つの方法であり、その先には、暮らしを自分で選べる状態への願いがあると考えられます。最初の発言から聞き手が推測でここまで飛ぶのではなく、本人と問いを深めて確かめることが大切です。
未来を考えるときは、次の三つをつなげて話してみてください。
- 変えたい現状: 誰が、どんな不安や不自由を抱えているのか。
- 実現したい姿: その人が、どのように暮らし、働き、選べるようになってほしいのか。
- 事業の役割: その変化に、自分たちがどう関わるのか。
「社会を豊かにする」という大きな願いも、この関係を考えると、自分たちの事業として引き受けたい意味が見えてきます。
想い・未来・事業の関係を確かめる
深く聞いて出てきた言葉を、そのまま並べても理念にはなりません。「なぜ大切にするか」「何を実現したいか」「事業を通じてどう関わるか」が、意味としてつながっているかを考えます。
修理会社の例なら、説明を丁寧にすることは、相手が納得して選ぶための関わり方です。その先に、住まいの困りごとがあっても、自分の暮らしを選べるようになってほしいという願いがあります。説明、選択、暮らしを同じ重さで列挙するよりも、この関係を捉えることで、中心に置きたい想いを考えられます。
複数の理念文を掲げる場合も、それぞれが何を伝え、どうつながるのかを確かめます。同じ単語を繰り返すだけでは、構造が通っているとは言えません。反対に、別の言葉を使っていても、一つの意思からつながる表現は考えられます。
二つの文案を比べて、何を中心に掲げるかを考える
修理会社の例で、二つの文案を比べてみます。
丁寧な説明と確かな修理で、お客様に安心を届ける。
こちらは、提供する仕事と、その先にある安心を伝えています。ただし、「安心」がどのような状態か、なぜ説明を大切にするかは、本文だけでは読み取れません。
住まいの困りごとに、納得して選べる道をつくる。
こちらは、顧客が自分で選べることを中心に置いています。その分、何をする会社かという説明は弱くなるため、事業紹介などで補う必要があります。
後者がいつでも優れているわけではありません。会社が掲げたい中心はどちらか。実際の支援範囲を超えていないか。社員や顧客に何が伝わり、何が伝わらないか。文案の採否は、こうした理由まで説明して決めます。
以下の設備修理の会社は、考え方を説明するための架空の例です。
一つの想いから、Mission・Vision・Valueをつくる
ここまでの修理会社の例を、三つの言葉につなげてみます。出発点にあるのは、設備の知識がないことで選択肢が狭まり、望む暮らしを諦めてほしくないという想いです。
Mission:目指す未来と、会社の存在意義
住まいの困りごとに、納得して選べる道をつくる。
目指すのは、住まいに不具合が起きても、本人が納得して暮らしを選べる未来です。そのために選択肢を開くことを、自分たちが存在する意味として掲げています。修理するという業務だけでなく、その仕事を通じて誰の何を変えたいのかを表す文案です。
Vision:Missionの達成に向けて、何を為すか
修理と交換の選択肢をひらき、その先の暮らしまで相談できる地域の窓口になる。
Missionを実現するため、この会社が担いたい役割を示しています。一度の修理に対応するだけでなく、費用や使い続ける場合の負担も含め、住まいの相談を受け止める窓口を目指す。現在できていることを紹介する文章とは区別し、これから何を為すのかを掲げます。
Value:その仕事で大切にする価値観
- 選ぶ人の納得を尊重する。こちらの都合で結論を急がず、本人が何を大切にしたいのかを聞く。
- 不都合な情報にも誠実である。勧めたい方法の利点だけでなく、負担や限界も伝える。
- 暮らしへの関心を持ち続ける。設備の状態とともに、それを使う人がどのように暮らしたいのかを知ろうとする。
Missionが掲げる未来に向けてVisionの仕事があり、その仕事への向き合い方にValueが通っているか。三つを並べたときは、この関係を確かめます。この例なら「納得して選べる」と掲げながら、交換しか案内しない仕事の仕組みになっていれば、言葉と実態の間に課題が残ります。
同じ想いからでも、別の文案は生まれます。三つの欄を埋めることを完成の条件にせず、なぜこの言葉なのか、会社全体に通じるか、読み手が自分との関係を感じられるかまで検討します。
自分の想いとして、人が受け取れる言葉になっているか
代表には背景が分かっていても、初めて読む人には完成した言葉しか見えません。「納得して選べる道をつくる」と読んだ顧客が、自分の困りごとに関わる言葉だと感じられるか。社員が、自分たちの仕事で何を大切にする話なのかを理解できるか。書き手の説明がなくても届く意味を考えます。
誰にでも好かれる表現を選ぶことと、共感される言葉を考えることは同じではありません。会社が大切にしたい想いを保ちながら、読み手が自分の暮らしや仕事との関係を見いだせるか。その接点が見えないなら、表現を見直すのか、背景を伝える文章を添えるのかまで検討します。
理念の文案ができたら、次の三点を読み返してみてください。
- 想いの根: なぜこの言葉を掲げたいのかを、自分の言葉で説明できるか。
- 構造: 想い、未来、事業の関係が通っていて、意味の飛躍や矛盾がないか。
- 届き方: 背景を知らない人にも、自分との関係を感じられる言葉になっているか。
答えに詰まるところがあれば、表現を変える前に、そこへ問いを戻します。作った言葉をきれいに仕上げることよりも、言葉にするべき意味を捉え切れているかが重要です。
文案と仕事のつながりを確認する整理表
自社の文案は、最近の仕事に結び付けて読むと、意味が通っているかを確かめやすくなります。最初からすべての欄を埋める必要はありません。答えが出ない部分も、さらに聞きたい問いとして残しておくことで、考えを深める手がかりになります。
| 確認すること | 自社で書き出す内容 |
|---|---|
| 想いの根 | 大切にしていることが表れた出来事と、それを選んだ理由 |
| 目指す未来 | 誰の、どんな現状を変えたいか |
| 事業との関係 | その変化に、今の仕事・これからの仕事がどう関わるか |
| 文案の意味 | その言葉を選んだ理由と、読み手に伝わる意味 |
| 仕事での確認 | その言葉に照らして、何を選び、何を見送るか |
| 不足している条件 | 実践に必要な情報、時間、権限、仕組み |
例えば、既存の設備修理の説明例で、顧客の納得を大切にすると掲げても、交換以外の選択肢を説明する時間が確保できなければ、担当者は実践に困ります。その場合は、言葉の言い換えに加えて、説明できる仕事の条件を考える必要があります。
採用で使う場合も、理念への共感だけを求めるより、実際の仕事内容と結び付けて説明します。会議では、判断が難しかった案件を一つ取り上げ、掲げた考えとどう関わるかを話してみる。社内共有では、言葉の由来と、まだ実現できていない課題を併せて伝える。用途に応じて背景を補うことで、言葉と仕事を照らし合わせられます。
完成の確認項目
・なぜこの未来を目指すのか、本人の言葉で説明できる。
・三つの文章が、別々の約束になっていない。
・現在の実態と、これから目指すことを区別して説明できる。
・背景を知らない読み手が、仕事との関係を理解できる。
・言葉どおりに動けない場合、その理由を確認できる。
この表は、文案を機械的に採点するためのものではありません。説明が途切れるところに問いを戻すことで、想いと事業の関係をさらに考える手がかりになります。
考えはあるのに、言葉にすると大切なものが抜けてしまうとき
自分で何度も考えているからこそ、当たり前になっていて言葉にできない想いもあります。「これが言いたかった」と思えるところまで掘り下げるには、自分だけでは立てなかった問いが必要になることもあるでしょう。
Lazottoでは、基本的に代表のお話を伺い、想いの根や実現したい未来を深く読み解きます。必要に応じて、ほかの役員や、代表からご紹介いただいた方のお話も伺います。そのうえで、理念としての構造と、人への届き方を考えながら言葉をつくります。
言葉にしきれない考えや、今ある文案の違和感がある方へ。支援ページでは、Lazottoがどのような仕事を担うのかをご案内しています。