企業理念・MVVの作り方想いを掘り下げ、言葉を選ぶまで
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企業理念を作ろうとすると、まず「使命は何か」「どんな会社を目指すか」を埋めたくなります。ところが、話し合って出てきたのは「お客様第一」「信頼」「挑戦」。間違ってはいないのに、自分たちの会社を言い表せている気がしない。そんなところで、手が止まることがあります。
理念を作るには、想いの根を掘り下げ、実現したい未来との関係を考え、その意味が人に届く言葉を選ぶ必要があります。この記事では、設備修理の会社を例に、抽象的な想いから文案を考えるまでの過程をたどります。
最初に考えたいのは、いま理念を作る理由
新しい事業を始める。会社が大きくなり、代表が一人ひとりに想いを伝えることが難しくなった。事業は変わったのに、会社を説明する言葉が昔のままになっている。理念を必要とする背景によって、考えるべきことも変わります。
例えば、代表の中では会社の目指す未来が見えているのに、文章にすると一般的な言葉になる場合。言い回しを整える前に、その未来をなぜ実現したいのか、自分たちの事業とどう結び付くのかを掘り下げる必要があります。
まずは、「いまの言葉では何が伝わらないのか」「これから何を実現したいのか」を考えてみてください。最初から答えがまとまっていなくても構いません。説明しようとして詰まるところや、書いてみて違和感が残るところが、問いを深める出発点になります。
Lazottoが考える、ミッション・ビジョン・バリューの関係
MVVはミッション・ビジョン・バリューの略称です。言葉の捉え方は一様ではありません。Lazottoでは、次の関係で考えています。
| 言葉 | Lazottoの捉え方 |
|---|---|
| Mission | 目指す未来と、会社の存在意義を一つにしたもの。 |
| Vision | Missionを達成するために、何を為すのか。 |
| Value | 大切にする価値観。 |
Missionを考えるときも、存在する理由だけで終えず、実現したい未来まで掘り下げます。そこに向けて何を為すかをVisionとして考える。この関係を踏まえ、まずは言葉にする前の想いから見ていきましょう。
「大切にしていること」の意味と、その根を掘る
「お客様を大切にしています」という答えを聞いたら、まず、その会社にとって「大切にする」とはどういうことかを尋ねます。要望をかなえることなのか、相手が納得して決められることなのか。言葉の意味を考えながら、その想いが生まれた場面へ問いを深めます。どんな相手に、何をしたのか。別の選択肢もあった中で、なぜそれを選んだのか。負担が増えても続けたことには、どんな理由があったのか。
ここで知りたいのは、立派なエピソードの数ではありません。本人にとって当たり前になり、普段は説明しない判断です。
同じ「丁寧」でも、大切にしているものは違う
例えば、設備修理の会社が「丁寧な説明」を大切にしているとします。この会社にとっての丁寧さを尋ねると、「交換を勧めるだけでなく、修理して使い続ける場合の負担も伝えること」という答えが返ってきたとします。
「なぜ、交換を勧めるだけではいけなかったのでしょうか」。この問いに、「仕組みを知らないからという理由で、お客様の選択肢を狭めたくなかった」と答えたとします。
この場合、丁寧さの奥にあるのは、話し方へのこだわりだけでしょうか。知識の差があっても相手が自分で選べることを大切にしている、とも読めます。ただし、これはまだ解釈です。「いつもそう考えているのか」「別の場面でも同じ選択をするか」を、さらに本人と確かめる必要があります。
自社にとって何を意味するか。
なぜ、それを大切にするのか。
誰の、どんな状態を変えたいか。
事業を通じて何ができるか。
二つの関係を読み解き、掲げる言葉を選ぶ
「つまり、こういうことですね」と早くまとめすぎると、聞き手の理解に収まったところで話が止まります。本人がすぐに答えられない問いも、急いで埋めずに考える時間を取る。その先で、最初の答えとは異なる言葉が見つかることがあります。
実現したい未来から、事業の意味を考える
過去の経験を深く聞いても、「これから、何を実現したいのか」は別に問う必要があります。創業のきっかけと、いま事業を続ける理由が同じとは限りません。始めた頃には見えていなかった課題や、仕事を重ねて生まれた願いもあるはずです。
先ほどの修理会社なら、「お客様が納得して選べるようにしたい」の先へ進みます。選べるようになったら、その人の暮らしはどう変わるのか。今はどんな不安や諦めがあるのか。それを変えるために、自分たちの仕事には何ができるのか。
例えば、「設備のことが分からないために、住み慣れた家での暮らしを諦めてほしくない」という想いが出てきたとします。すると、丁寧な説明は仕事の一つの方法であり、その先には、暮らしを自分で選べる状態への願いがあると考えられます。最初の発言から聞き手が推測でここまで飛ぶのではなく、本人と問いを深めて確かめることが大切です。
未来を考えるときは、次の三つをつなげて話してみてください。
- 変えたい現状: 誰が、どんな不安や不自由を抱えているのか。
- 実現したい姿: その人が、どのように暮らし、働き、選べるようになってほしいのか。
- 事業の役割: その変化に、自分たちがどう関わるのか。
「社会を豊かにする」という大きな願いも、この関係を考えると、自分たちの事業として引き受けたい意味が見えてきます。
想い・未来・事業の関係を確かめる
深く聞いて出てきた言葉を、そのまま並べても理念にはなりません。「なぜ大切にするか」「何を実現したいか」「事業を通じてどう関わるか」が、意味としてつながっているかを考えます。
修理会社の例なら、説明を丁寧にすることは、相手が納得して選ぶための関わり方です。その先に、住まいの困りごとがあっても、自分の暮らしを選べるようになってほしいという願いがあります。説明、選択、暮らしを同じ重さで列挙するよりも、この関係を捉えることで、中心に置きたい想いを考えられます。
複数の理念文を掲げる場合も、それぞれが何を伝え、どうつながるのかを確かめます。同じ単語を繰り返すだけでは、構造が通っているとは言えません。反対に、別の言葉を使っていても、一つの意思からつながる表現は考えられます。
二つの文案を比べて、何を中心に掲げるかを考える
修理会社の例で、二つの文案を比べてみます。
丁寧な説明と確かな修理で、お客様に安心を届ける。
こちらは、提供する仕事と、その先にある安心を伝えています。ただし、「安心」がどのような状態か、なぜ説明を大切にするかは、本文だけでは読み取れません。
住まいの困りごとに、納得して選べる道をつくる。
こちらは、顧客が自分で選べることを中心に置いています。その分、何をする会社かという説明は弱くなるため、事業紹介などで補う必要があります。
後者がいつでも優れているわけではありません。会社が掲げたい中心はどちらか。実際の支援範囲を超えていないか。社員や顧客に何が伝わり、何が伝わらないか。文案の採否は、こうした理由まで説明して決めます。
自分の想いとして、人が受け取れる言葉になっているか
代表には背景が分かっていても、初めて読む人には完成した言葉しか見えません。「納得して選べる道をつくる」と読んだ顧客が、自分の困りごとに関わる言葉だと感じられるか。社員が、自分たちの仕事で何を大切にする話なのかを理解できるか。書き手の説明がなくても届く意味を考えます。
誰にでも好かれる表現を選ぶことと、共感される言葉を考えることは同じではありません。会社が大切にしたい想いを保ちながら、読み手が自分の暮らしや仕事との関係を見いだせるか。その接点が見えないなら、表現を見直すのか、背景を伝える文章を添えるのかまで検討します。
理念の文案ができたら、次の三点を読み返してみてください。
- 想いの根: なぜこの言葉を掲げたいのかを、自分の言葉で説明できるか。
- 構造: 想い、未来、事業の関係が通っていて、意味の飛躍や矛盾がないか。
- 届き方: 背景を知らない人にも、自分との関係を感じられる言葉になっているか。
答えに詰まるところがあれば、文末を整える前に、そこへ問いを戻します。作った言葉をきれいに仕上げることよりも、言葉にするべき意味を捉え切れているかが重要です。
考えはあるのに、言葉にすると大切なものが抜けてしまうとき
自分で何度も考えているからこそ、当たり前になっていて言葉にできない想いもあります。「これが言いたかった」と思えるところまで掘り下げるには、自分だけでは立てなかった問いが必要になることもあるでしょう。
Lazottoでは、基本的に代表のお話を伺い、想いの根や実現したい未来を深く読み解きます。必要に応じて、ほかの役員や、代表からご紹介いただいた方のお話も伺います。そのうえで、理念としての構造と、人への届き方を考えながら言葉をつくります。
言葉にしきれない考えや、今ある文案の違和感がある方へ。支援ページでは、Lazottoがどのような仕事を担うのかをご案内しています。